生成AIに正確な指示を出すコツ―教師のための指示出し術―

パソコンを使いこなしているように見える猫 English
???
Englishはたらく日本語語学講師
この記事は約7分で読めます。

授業準備や教材作成に、ChatGPTなどの生成AIを使う先生が増えています。

💡具体的な活用例を知りたい方はこちらの記事も参考にどうぞ。

しかし、

「思ったような教材が出てこない」
「AIの説明が難しすぎる」
「どういう指示を出したらよいかわからない」

…などと感じたことはありませんか?

指示(プロンプト)の出し方にはコツがあります。
この記事では、授業準備においてAIを使い倒している私が正確な指示を出すコツを紹介します。
例文も載せておきますのでぜひご参考になさってください!

うまくいかない原因は「条件不足」

AIにただ「問題を作って」と頼むと、
・レベルが生徒・学生に合わない
・問題形式がバラバラ
・問題文自体が難しい
など、どこかピントのずれた結果が返ってきたりすることがあります。

これには理由があります。
それは、「誰に」「何を」「どんな形で」という3要素が抜けているということ。
不足している要素を補えば、思い通りの出力が得られますよ。

3つの要素をセットで伝える

① 対象(誰向け)

 例:N4レベルの外国人留学生に、歯科衛生士養成校の学生に

② 内容(何を)

 例:「ように・ためにの使い方」「“社内文書”の書き方の導入」「see, look, watchのニュアンス差の説明」

③ 形式(どんな形で)

 例:「4択の選択式問題を10問」「会話スキットを3つ」「A4 1枚に収まるように」

今これをお読みのあなたは、出力された完成品を使って何がしたいですか?
頭の中にあるイメージを言葉にしてAIに伝えてみてくださいね。

実際の指示出し例

指示出し例①:「文法説明をお願いする」

ように・ためにの使い方を教えてください。ちがいも教えてください。
教える対象はN4レベルの外国人留学生です。

【出力結果】
AIはやさしい日本語でそれぞれの使い方とちがいを整理。例文も提示してくれた。

💡ポイント💡
「対象のレベル」を伝えること。
同じ質問でも、AIは学習者のレベルに合わせて説明の深さを変えてくれます。
「中級レベルの学習者に」「高校生に」「医療系の学生に」など、具体的に伝えると◎。例文に反映されます。
「CEFR A-1レベル」「JLPT N4レベル」なども具体的でいいですね。

指示出し例②:「練習問題を作ってもらう」

ように・ためにの選択式問題を10問作ってください。

【出力結果】
授業でそのまま使える練習問題を作ってくれた。正答と解説付き。

💡ポイント💡
問題数を指定するときは、「○問」「〇分でできる~」など数字を入れておきましょう。授業で使うときに「どのぐらい時間がかかるか」のめやすになります。

問題文で使用される語い(単語)の難易度も「JLPT N4レベルで」など指定しておくと「答えと解説」のレベルも合わせてくれますので、かなり使いやすい教材になります。

指示出し例③:「スキット(会話文)を作ってもらう」

歯科衛生士学校の学生向けに、歯科医院受付での患者とスタッフの短い英会話ダイアログを3つ作ってください。目的はいろいろな対話例を学生に見せることです。
授業対象者はCEFR A-1レベルです。日本語訳をつけてください。

💡ポイント💡
会話の「場面」や「登場人物」を伝えると、よりリアルな会話文ができます。
文脈が具体的になるほど実際に即したものになるんです。
例の中では「短い」としていますが、「3往復程度」など、具体的に指示しても〇。

ほとんどの生成AIはNative English speakerなので、「自然な英会話を出力する」のはお手のもの。日本人である私たちの頭の中には無い、ネイティブならではの言い回しに出会えることもあり、かなりお得感があります。笑

指示出し例④:「読解問題を作ってもらう」

以下の短い文章をもとに、N3レベルの読解問題を3問作ってください。
選択肢と答え、そして各問題のポイントも入れてください。

基になる文章は、「自分で用意する(面倒くさいけど手入力)」か「別途生成を依頼する」などで用意します。私は以下のように依頼して文章も作ってもらうことが多いです。手入力面倒くさいので。笑

「卒業」をテーマに、N3レベルの文章を作ってください。300字ぐらいの長さで2段落構成を希望します。作成した文章を基に読解問題を作りたいです。

「指示語を含めて」「逆説の接続詞を複数使って」「〇〇の文型を使って」など、かなり細かく指定しても大丈夫です。

上の例では日本語の読解問題を作成するよう指示していますが、英語でも同じことができます。
英語でも「無生物主語の文を含めて」「分詞の後置修飾を使った文を入れて」など、細かい指定が可能です。

「生徒・学生に身に付けてほしいこと」をピンポイントで練習できる問題って、探すのがとても難しいじゃないですか。その探す時間をAIに使えば、著作権フリーのオリジナル問題ができますよ。

指示出し例⑤:「同義語のニュアンス差を説明してもらう」

「see、watch、lookのちがいを、小学生にもわかるように、簡単な日本語で説明してください。」

「小学生にもわかるように」この言葉は魔法のフレーズです。笑
多くの先生は、説明するときはできるだけ簡単な言葉を使うようにしますよね。相手が大人であってもそれは変わらないと思います。

でも、出力結果がイカツい説明文だったらそれを簡単文に脳内再変換しなきゃいけません。
授業中に説明しながら再変換、私にはとても無理です。変なタイムラグが生まれそう。笑

だったら、再変換の必要がないように、元から簡単文で出力してもらえばいい。
そのときの魔法のフレーズが、「小学生にもわかるように」です。

指示出し例⑥:「スライドの構成を作ってもらう」

「発音指導の授業で使うスライドを作りたいです。スライド10枚分の構成案を作ってください。」

スライド作成時に意外と多くの時間を使ってしまう作業、それが「構成づくり」。
「コレを言うならアレの説明が前にあったほうが…」などとブツブツやっていると、ヌルヌルと時間が溶けていきますよね~。

そこで、「枚数」「目的(発音指導)」などを伝えると、AIが構成を自動で考えてくれます。
あとは内容を少し調整するだけで、完成度の高いスライドができます。

私はスライド作成タスクのとき、「Gamma(ガンマ)」を使用することが多いです。スライドに合うイラストを自動で入れてくれたり、小ネタが利いている印象です。

がっつりプロンプトは要らない

プロンプトは、もう要りません。

1年前は以下のような「ザ・プロンプト」って感じのキチンとしたプロンプトを入力しないと、出力結果がかなりブレてしまうので、使えるものができるまでにプロンプトを何度も書き換えたりしていました。

そこで、いっときプロンプト集が出回ってましたよね…私も1冊持ってます。
「プロンプトが作れないから…」とAI活用を諦めてしまう人もいました。
…私もその一人でした。笑

【これが ザ・プロンプトだ!】

# 命令書 役割とゴール
-[ ] あなたはプロの日本語教師です。以下の制約条件をもとに要約文の採点と助言をしてください。

# 制約条件
-[ ] 採点対象の文は、この後提示します。
-[ ] 採点と助言の元となる解答例はこの次のtaskの文章です。
-[ ] 高齢者の7割以上が入れ歯やインプラントを使用している。……(略)
-[ ] 点の上限は100点です。
-[ ] 解答例のすべての要素が入っているかを重視します。
-[ ] 日本語の表記ゆれがある場合、減点対象になります。
-[ ] 文法上の誤りも減点対象になります。
-[ ] この命令書が理解できたら「採点する文を待っています。」と教えてください。

しかし、この1年ほどでAIは驚くほど進化しました。
今のAIは、雑談のノリでこちらの意図を伝えても、ブレの少ない結果を出してくれるようになっています。
プロンプトはほぼ不要となりました。

AIへ指示を出すときのコツ

これまでお話してきたように、かゆい所に手が届く万能秘書のようなAIですが、English speaker産であるため、日本語話者が指示を出すときに、気にかけておくとよいコツがいくつかあります。

【気にかけておくとよいコツ】

  • 主語を適宜補う(日本語話者は「私」などの一人称の省略が多く、行為者があいまいになりがち)
  • 一文を短く→条件が多いときは箇条書きにする
  • 出力結果の使用目的をしっかり伝える→「相談」がしたいときは「相談に乗ってください」とはっきり伝えると〇。
  • 指示語の使用は控える→指示語を多用しないといけないような複雑な指示は「分割する」

まとめ

大切なのは、「正確な言葉」よりも「伝わるイメージ」。
まずはこの記事で紹介した指示出し例をそのまま使って、
授業準備の中でAIに頼んでみてください。

一度やってみると、AIとの距離がぐっと近く感じられるはずです。
きっと、AIが“参謀”みたいにあなたを支えてくれるはずですよ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました