会話と授業を回すのは文法ではなく「反応のフレーズ」

楽しく授業を受ける子どもたちの様子 English
Englishはたらく日本語語学講師
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会話を回すのはどんな要素だと思いますか?
授業を楽しいものにするには、何が必要なのでしょうか?

これに気づいたきっかけは、JLPT(日本語能力試験)対策の授業で起こったことです。

この授業では、毎回10問の文法クイズをしています。
その日のトピックは使役とか受身のガチ文法ではなく、定型表現でした。

A「お久しぶりですね。」
B「(  )。」

このBの発話を答えさせる、JLPT聴解の「即時応答」のような問題が10問。

このクラスの普段の平均正答率は70%前後なのですが…、なんとこの10問の平均正答率は10%以下でした。

「会話が苦手」というクラス、理由の一端が見えた気がしました。
それは、決まり文句を知らない、ということです。

決まり文句は「反応するためのフレーズ」

私は、決まり文句は「反応するためのフレーズ」だと考えています。
相手に「聞いてますよ。」「理解していますよ。」という反応を返すために存在し、意味はそこまでありませんが、会話の潤滑油として大きな役割を果たしていると思います。

同じ機能を持つものとして、「相づち」があると思います。

日本語話者は他言語(特に英語)に比べて「相づち」が多い傾向にあるそうです。
確かに、相手の発話を促すような「相づち」をタイミングよく打てる人が「聞き上手」とされますよね。

相手の呼吸を読むような、この日本語独特の「相づち」を外国人に求めるのはやや酷でしょうが、表現として知っておくと会話がより楽しめるようになるのではないでしょうか。

ただ、JLPT対策授業のクラスの学生は、決まり文句や相づちといった「反応するためのフレーズ」をあまり知らないようでした。

留学生だけでなく日本人学生も

私は留学生には日本語、日本人には英語を教えています。
日本人を対象に英語を教える際、文法とは別に時間を作って教えていることのひとつに「相づち」があります。

教えているのは歯科衛生士養成校の学生です。
授業では「歯科英会話」とタイトルのついたテキストを使っていますが、テキストに載っているのは “Please open your mouth.” などの指示ばかり。
つい
「これは…会話なのか?」
と思ってしまいます…主旨を考えると仕方ないですけどね。

また、授業中に外国での診療風景…例えば口腔内写真撮影時などの動画を見せることがあります。
ある時、動画を見た学生がぽつりとこぼしました。

「goodとかthank youとかいっぱいしゃべってますね。」

彼女が言うには、動画の中の衛生士は、指示を出し、患者さんがそれに従うたびに何か言葉を発している、というのです。
「でも、テキストには書いてないですね。」
これはとても重要な、流してはいけない指摘だと私は思いました。

例えば、患者さんにマウスオープナーを持つようお願いし、患者さんがそれに従ってくれたときに、患者さんが日本人だったら

「それでいいですよ。」
「ありがとうございます。」

など何か言葉をかけるのが普通です。
少なくとも、無言で流したりはしないでしょう。

けれど、相手が外国人となると、無言になってしまう。
それは、「何て言ったらいいかわからないから」。

そんなわけで、この授業では「それでいいですよ。」に相当するフレーズを時間を取って教えています。

「会話ができない」の共通点

「会話ができない」外国人留学生と日本人学生。
こう見てくると、同じ課題が潜んでいることに気づきませんか?

それは「反応するためのフレーズを知らない」。
つまり「相づち」や「決まり文句」を知らないということ。

おそらく、知らないことが「うまく返せないのでは」というおそれになり、会話ができないと思ってしまうのでしょう。

授業への影響

「反応するためのフレーズ」を知らないことは、授業へも影響してきます。

語学の授業において、クラスの人数は多くても30人前後だと思います。

ひと昔前は講義型が一般的でしたが、今の主流は双方向型(interactive)です。
「生徒・学生の反応ありき」ですよね。
だから、生徒・学生の反応を引き出そうと工夫しておられる先生方ばかりだと思います。

ここで、「反応するためのフレーズ」。
特に、日本語の授業の場合は直接法で、授業者対象者ともに日本語の使用が推奨されているため、「反応するためのフレーズ」を知らないことは、授業への関与度を下げる一因になると思います。

授業中、
笑いが起きたり、
授業者側が進めやすくなったり、
立ち止まって内容を深めることができたり、
これは、生徒・学生の何気ないひと言がきっかけになります。

そのきっかけを生む要因は、「知っているか、知らないか」が大きいです。

「いいですね。」「ちょっとわかりません。」「もう一度(いちど)言ってください。」
ホワイトボードに書いておくだけでも、反応は変わってきます。ぜひ試してみてください。

※私は日本人学生対象の英語の授業でも上の日本語3フレーズをホワイトボードに書いています。
「反応していいんだよ」っていうサインとして…。

まとめ

文法や単語だけでは、会話は回りません。

「反応するためのフレーズ」を知っていること。
それが、会話の入り口を作り、授業を動かし、コミュニケーションを続ける力になります。

だから私は、文法と同じくらい、「相づち」や決まり文句を大切に教えています。

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