日本語がまだ不自由な外国人と話すコツ

日本が好きな外国人と話す日本人 はたらく
はたらく日本語語学講師
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外国人と日本語で話していて「あれ、伝わってないかも…」と感じること、ありませんか?
特に日本語がまだ不自由な外国人には、ちょっとした言い回しや言葉の順序の違いで理解度が変わってしまうこともあります。

この記事では、私の実体験をもとに日本語がまだ不自由な外国人と話すコツを紹介します。

ネイティブの日本語が通じにくい理由3つ

英語ネイティブ同士の会話を聞いていると、到底わかる気がしませんよね。笑
それと同じで日本語ネイティブ同士の会話も、外国人にとっては驚天動地のわかりにくさだと思います。
では、その「驚天動地のわかりにくさ」の要因を3つ挙げてみますね。

主語抜け

【真夏、バス停で】
A:暑いですね~。あ、来ましたね。乗りましょうか。
B:(応答)

Aの発話は短いですが、主語が3つ省略されているのがわかるでしょうか。
この発話の主語を補うとこうなります。

A:今日は暑いですね~。あ、バスが来ましたね。私たちは乗りましょうか。

Bが日本人であれば、「そうですね。」ぐらいの応答をするでしょうが、Bが外国人ならちょっと混乱するかもしれません。そう、こんな風に。

Bの心の声:熱いなら上着を脱げばいいのに…。何が来たんだろう…バスかな?あ、乗りましょうと言っているから、バスのことだな。

日本語会話では「主語抜け」と「助詞抜け」が頻繁に起こります。
これによって日本語会話慣れしていない外国人にとって、ネイティブ日本人の発話はわかりにくいものになっています。

私が気をつけているのは、「動作主を省略しない」ということ。
授業中の指示だと、「誰がするのか」が大変重要になるので、特に気をつけています。

敬語・美化語を使いすぎ

私は外国人と日本語で話すときは敬語・美化語をほとんど使いません。
※美化語:「お」または「ご」を付けた用語です。例:めし→ご飯

日本語学校で習ったり、仕事やアルバイトで身に付けたりして知っている外国人も多くいるとは思いますが、知っているからといって使えるわけではないですね。我々の英語と同じです。笑

また、美化語には、「美化することによって語のイントネーションが変わり、異なる語に聞こえてしまう」という欠点もあります。

【語のイントネーションが変わる例】
茶碗(中・中)→お茶碗(低・高・中)
※いい例がパッと浮かばなかった…異論・反論は受け付けますので、雰囲気だけご理解いただけるとうれしいです…。 

私が外国人と話しているところを聞いた人は、
「ずいぶんぞんざいに話すんだな…。失礼じゃないのか?」
と訝るかもしれません。笑

でも、礼を取るより話の内容が伝わるほうが大事なのでこれからも敬語・美化語は使いません。
たまに学生が一生懸命敬語を使って話しかけてくるので、そのときは付き合います。笑

漢字熟語・カタカナ語の使いすぎ

漢字熟語

漢字は非常に便利です。なんせ、意味と音をいっぺんに表現してくれますから。
でも、それは「書き言葉」の場合。
漢字は「話し言葉」では音だけの存在で、意味は表現されませんよね。
私たちは、文脈や前後関係などを頼りに、頭の中で適当な漢字を当てはめながら会話をしているのです。

【例】いし:医師、意志, いがい:以外、意外

しかし、非漢字圏出身の外国人にとってこれは「スーパーサイヤ人に今すぐなる」的な無理難題です。

では、どうすればいいのかというと、「和語を使う」のがいいです。
下の【例】をご覧になると、「和語を使う」ということが何となくつかめると思います。

【 和語とは? 】
元々日本にあった言葉で、ひらがなで書かれることが多い「やまとことば」や、漢字を訓読みする言葉を指します。動詞の場合、漢字で書くと送りがなが出る語は和語であることが多いです。

【 例 】
・ 提出する → 出す
・ 食品 → 食べもの
・ 申し込む → 行きたい(やりたい)と言う

日本語学校では和語から教えます。その後漢字熟語です。
そういうわけで、初級者に近いほど、和語を使ってあげたほうがよい、と言えるでしょう。

カタカナ語

外来語はカタカナで表現されますが、多くのカタカナ語の発音は、元の語と大きく異なっていることが多々あります。

【例】ビール、リスペクト、ヨーロッパ

そんなわけで、漢字熟語とカタカナ語が入り混じったビジネスパーソンの話なんて、日本語覚えたての外国人にとっては難解を極めるものだと思います。かくいう私もわからないことがよくあります…。笑

ではどうすればいいのか。
・ 元の語をキチンと発音する(笑)
・ 意味的に近い(簡単な)日本語に置き換える

【 例 】
・ ビール → beer /bíɚ(米国英語), bíə(英国英語)/ または「酒」
・ リスペクト→ /rɪspékt(米国英語), rɪˈspekt(英国英語)/  または「尊敬する」「すごいと思う」

まとめ

ここまでお話したことをまとめます。

  • ネイティブの日本語は外国人にとって難解な場合が多い
  • 「主語抜け」:動作主を補う
  • 「敬語・美化語」:使わない
  • 「漢字・カタカナ語」:和語を使う、キチンと発音する、意味的に近い日本語に置き換える

外国人と他の言語で話す前に文章に起こして準備する人も多いと思いますが、AIに翻訳をしてもらうときも、上のコツはそのまま役に立ちます。

【例】
(元文)資料提出後、参加者に共有しておいてください。(漢字熟語が多いと長い尺の語が多くなる。)
(結果)When you submit the materials, please share them with the participants.

(元文)資料を出したら、みんなに知らせてください。
(結果)After you send (hand in) the materials, please tell everyone.

(元文)こちらにご記入いただけますでしょうか。( 敬語なので、AIも丁寧で少し長い英文を返しがち。)
(結果)Could you please fill this out for us?

(元文)ここに書いてください。
(結果)Please write here.

特に、話すために翻訳したいときは、コツを使って元文を入れたほうがいいです。
なぜなら、簡単な語で出力されるからです。上の例を見れば一目瞭然ですね。

ここまでお話したことは、「やさしい日本語」の概要の一部です。
この記事の内容に興味を持ってくださった方は、「やさしい日本語」を学ぶと面白いかもしれませんよ。

あなたのその「伝えたい」というやさしさが、お相手に伝わりますように。

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